怜斗が花って呼んでくれた……。
咄嗟のことだからかもしれないけど…すごく嬉しかった。
好きな人に名前を呼ばれただけで「花」が大切になる。
笑みがこぼれる。
「今日どうしたんだよ」
「え?」
「……なんつーか…」
そこから黙ってしまった怜斗。
怜斗のワックスを使っていない黒髪が私の鼻をくすぐる。
私の好きな匂いだ。
告白した時に抱きついた背中の匂いに似てる。
連れてこられた保健室。
「あら? どうしたの?」
「こいつ転んで…」
あ、もう『こいつ』になってる。
「よくこけるわね~。彼氏も大変ね」
「ははッ」
笑った怜斗は私をソファに座らせる。

