「ほらっ、乗れって」
「わかったってば」


授業が終わるチャイムがなった瞬間、SHRが残っているというのに私達は一番に教室を飛び出した。
遙の自転車の後ろに乗り、肩に手を乗せる。


「落ちんなよっ!」
「えっ、ちょっ、うわぁぁっ!!」


いきなりスピードを出されたために、身体が後ろに持っていかれる。このままでは危ないと判断した私は遙の腰に腕を巻きつけた。


「ねぇっ、」
「ん?」
「何処のアイスクリーム屋に行くの?」
「秘密!」


そう言われ、私は記憶の中にあるアイスクリーム屋を思い浮かべてみるが、秘密、と言うくらいなのだから私の知らないところなのだろう。そう考えることにして、私は遙の背中に耳をあてた。


「葉月?」
「………」
「おーい、葉月ー」
「…ん?」
「ちゃんと反応しろよなー!寝てんのかと思ったじゃん」
「まさかっ、寝るわけないでしょ」


…でも、寝そうになっていたのは確かだった。
遙の背中の温もりが、私の瞼を重くさせて…。
もし今遙に名前を呼ばれていなかったら、私は夢の国へと旅立っていただろう。


「あ、着いた」


目を擦りながら、自転車から降りる。
目の前に広がる光景に、私は目を輝かせた。