それでも、交差点に差し掛かったところで、ユキは足を前に出す速度を速めた。

隣を通り過ぎるのはほとんど家族連れやカップルのような所帯持ちだったが、構わず歩く。

白いロングコートとムートンブーツを履いた彼女は、一見何処にでもいるOLのようにみえたが、近くを通り過ぎる者はその美しさに顔をはっとさせた。

どこか幼さを残したまま、少女のような雰囲気をまとった彼女は、みるものの心を温ためたし、切れ長の瞳と白い肌にちょこんとのった唇は、大人の色気で世の男性を誘惑した。

さらに背中まで伸びた黒髪は、彼女を神秘的な女性に仕立てあげているようだった。







そんな美しさを持ってまでも、彼女自身がそれに気づいているかどうかは定かではない。

実際に彼女は誰よりも強くあろうとしたし、誰よりも男前な女の子であった。

舌ったらずで高めのハスキーボイスは彼女を憤慨させたし、小さめの身長は(それでも160は超えている)彼女をさらに落胆させた。


しかし、



彼女もまた、か弱き女性であることに変わりはない。誰からみても彼女は他の女の子より魅力的だったし、誰よりも美人だった。

幼いころからの持病は彼女の印象をさらにはかなげにさせ、彼女の肌を白い白いものに変えていった。


しかし、前述にもあるよう――やはり彼女は誰よりも男前な女の子であろうとするのだった。






それは21になった今でも同じである。