初恋の実らせ方

「でも…。
英知だって、何か用事があったんじゃないの?」


英知の野球部は土日祝日も練習があることが多くて、こんな時間帯に出歩くのは珍しい。
そもそも英知は公園へ散歩しに来るようなやつじゃないし。


英知は少し黙ってから口を開く。
彼が言うには、今日はグラウンド整備のために部活が休みで暇だから、レンタルビデオ屋に見たいタイトルを探しに行くつもりだったらしい。


ユニフォームも着ずに出歩く英知を見るとそれは本当のようで、彩は少しホッとした。
同じ一日付き合わせてしまうにしても、英知が暇を持て余していたのならあまり罪悪感を持たなくて済む。


「―――じゃあ、今日は英知で我慢してあげるよ」


彩はわざと仕方なさそうに言ったけど、本心じゃない。
本当は何も言わなくても彩の気持ちを理解してくれる英知に感謝していた。


英知は、素直じゃない彩の本心が手に取るように分かり、苦笑する。
どんな経緯をたどったにせよ、彩とデートできるのが嬉しかった。