初恋の実らせ方

「この前のこと許したわけじゃないんだから」


冗談だとばかり思っていたのに、本当にされてしまったファーストキス。
突然すぎて、英知を拒むことができなかった。


いくら啓吾が変わらなく優しく接してくれるとしても、それは英知を許す理由にはならない。


いくら英知のキスが嫌じゃなかったとしても。
思い出すだけで心臓が止まりそうなくらいドキドキしたとしても。
英知を許してはいけないはずだ。


「じゃあ兄貴にすっぽかされたまま帰るのかよ。
―――そんなにおしゃれしてんのに…」


英知の言葉に彩は赤くなる。
今日はもう啓吾に言ってもらえないだろう褒め言葉を、英知からもらえるなんて思いもしなかった。


「図星…」


英知は彩を見て笑う。


そんな英知を見て、どうして気持ちがばれちゃうのだろう、と彩は思う。


昔から漠然と思っていた。
英知は彩の心を読むのがすごく上手い。