初恋の実らせ方

「え…?」


何でそんなこと知って…。
動揺する彩を尻目に、侑治は落としたフライを指さした。


「だから、その魚、鱚だろって。
うまいよね、鱚のフライ。
俺も好き」


なんだ、魚の名前か。
思わず、ホッと胸を撫で下ろす。


落ち着かなきゃ。
昨日のことなんて、ばれるはずない。
彩はそう自分に言い聞かせながらお茶をごくりと飲む。


「何、彩ちゃん慌てちゃって。
キスのことだと思った?」


侑治がいたずらっ子のような顔で彩の顔を覗き込むから、今度はむせそうになってしまう。
昨日の今日だから心臓に悪いよ。


「何なら、俺としてみる?
啓吾より上手いよ」


そこで、今まで黙っていた啓吾がようやく口を開いた。


「誰がお前より下手だって?」


啓吾ってば、そんなところでムキにならなくてもいいのに。
結構負けず嫌いなんだから。