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翌日の昼休み、大好きなお弁当も開かない彩を不思議に思い、沙耶と久美子は向かいの席から顔を覗き込む。


「どしたの彩」


落ち込んでる原因は、もちろん英知だ。


昨日の英知のキスは、すごく驚いたけれど不思議と嫌じゃなかった。
啓吾に迫られたときはあんなに嫌がったのに、どうして英知のキスは拒めなかったんだろう。


不意を突かれたのは確かだけど、あんなに長い間唇を重ねていたのに嫌だと思えなかったのはどうして?


「長谷部先輩に振られたか?」


学食のカレーライスを口に運びながら言う久美子がやけに楽しそうで、彩は頬を膨らませる。


「縁起でもないこと言わないでよ」