「啓吾くん、おはよう」


彩の声が上擦る。
それもそのはず、啓吾は初恋の相手だから。


啓吾の視線は彩を通過して、その後ろに隠れるようにしていた英知の上で止まる。


「英知…。
また彩ちゃんにまとわりついて…」


「ちげーよ。
俺は彩を起こしてやったの」


「ごめんな。
英知が邪魔ばっかりして…」


啓吾の言葉に、彩は首を大きく横に振る。


その顔には、相変わらずカッコイイなぁ、なんて書いてあるもんだから英知は面白くない。


兄弟だけあって顔も雰囲気も似てるけど、現段階では啓吾の方が男として完全に勝ってる。


「彩ちゃん、チャリの後ろ乗る?」


啓吾は彩の前に自転車を止めて言った。


願ってもない提案だけど一瞬迷う。


啓吾は高校ではかなり目立った存在だから、誰かに見られたら面倒かもしれない。