英知は黙ってしまった彩に目を見つめる。


小さくて、ぽてっとした唇。
キスしたいと思うのは、彼女のことが好きなら当然だ。


迫って拒まれたら傷付くのは分かるけど、啓吾がそれから一週間も手を出さないのが理解できない。


自分ならきっと、何度拒まれたって懲りない。
彩にこんな思いをさせないのに。


「―――どうしたらいいのかな…」


彩が溜め息を吐く。


啓吾に嫌われるのが怖い。
それは啓吾を信用していないせいだと言われれば、そうなのかもしれない。


「早くキスしちゃえよ」


「そ、そんなの無理だよ!」


真っ赤になる彩に英知は胸が苦しくなっていく。


啓吾と付き合うようになって彩は届かないと思い込んでいたけれど、彼女との距離は以前と全く変わらない。


気が強いくせに泣き虫な、英知の好きな彩が目の前にいる。