初恋の実らせ方

「ふぅん」


英知は鼻を鳴らすようにしてようやくペットボトルを受け取った。


「珍しいね。
兄貴が一週間も手出さないなんて」


兄弟同士でそんな話もするんだと驚いたけど、それ以上に英知の発言が気になった。


「そう…なの?」


「彩にあんまり興味ないんじゃないの?」


英知は冗談とも本気とも取れるように言うと、キャップを開けてミネラルウォーターを口に含んだ。


「―――意地悪」


「今さら知ったんだ」


英知はべぇっと舌を出した。


それは趣味の悪い冗談だったけれど、その英知の表情はやっといつもの様子に戻っていて、彩は内心ホッとしていた。


「違う。
私がこの前拒んじゃったから、ちょっと気まずいだけだもん」


彩は頬を膨らませて顔を背ける。


「拒んだの?
―――彩だって、兄貴のこと好きじゃないじゃん」


嬉しそうに言う英知を、彩はそんなはずないでしょ、と睨んだ。