「ごめん、起こしちゃった?
落ち着くまでいるから、寝てていいよ」


彩は慌ててベッドの脇へ駆け寄り、ふらふらする英知を支える。


「―――何か彩が優しい…」


彩に目をやり、つぶやいた英知に少しムッとする。


「何それ…。
いつも優しくないみたいに言わないでよ…」


「―――優しくないよ、俺には」


彩は驚いて英知を見た。
そんなことを言われるとは思わなかった。


「彩はいつもいつも兄貴のことばっかで、俺にはいつだって冷たいじゃん」


「そんなこと…」


「―――自覚ないの…?」


心拍が速まるのを感じる。


英知のビー玉のように透き通った目に見つめられると、何も考えられなくなる。
彩はその目に捕らわれてしまうのが怖くて、目を逸らした。