初恋の実らせ方

「一人で起きるから、もう部屋に入れないで」


彩はリボンを襟に締め、玄関まで大きな足音で向かう。


「待って彩、俺も一緒に行く」


英知は彩が去年まで通っていた中学の二年生。


彩がこの春から通っている高校は電車で二駅先にあるから、一緒なのは駅前の信号までだけど。
こうしてくっついてくる英知が、実は少しだけかわいかったりする。


彩が玄関から出て、ふと隣りの長谷部家に目をやると、ちょうど啓吾が家を出るところだった。


啓吾は英知の四つ上の兄で、はっきりした目鼻立ちのイケメン。


パーマがかかった明るめの茶髪だけど、顔立ちが整っているから落ち着いて見えるし。


背も高くて、そこらへんの芸能人よりよっぽどカッコイイ。