「待ってよ。
気を遣ってそんなこと言うわけないでしょ!
私は、英知に早く良くなってもらいたいから…」


その言葉に英知は動きを止める。


「―――英知が心配だから来たの」


彩の言葉は本心なのに、英知は唇を噛むと、鋭い目で彩を睨む。


「俺の心配なんてしなくていい…。
兄貴のことだけ考えてりゃいいだろ!」


「―――どうしたの?英知。
今の、どういう意味…?」


英知は言い過ぎたことに気付いたけど、今さら止められない。


「兄貴の彼女に心配なんてされたくない!」


吐き捨てるように言った言葉は、彩を黙らせるのに十分だった。


心配されたくないくらい、彩の存在は迷惑なのかと思うと、胸が痛い。


英知に拒絶されるのがこんなに辛いなんて知らなかった。