「―――え…?」
彩はキッチンを通りかかったとき、母親に声を掛けられて足を止めた。
「え、じゃなくて、これお隣りに持って行ってちょうだいって言ったのよ」
母親はそう言いながら、小さい鍋にできたてのシチューを注いだ。
「今夜お隣りのご夫婦いないでしょ?
しかもさっき英ちゃんに会ったんだけど、すごく顔色が悪かったからお母さん心配で…」
「―――英知、具合悪いの?」
彩は驚いて聞き返す。
いつも元気すぎるくらいの英知が具合悪そうに見えるなんて、相当悪いんだ。
「顔が真っ青だったわよ。
平気だとは言ってたけど、お母さんいないでしょ?
啓くんはしっかりしてるから心配ないと思うんだけど、ねぇ…」
英知の言う大丈夫は当てにならない。
英知は極度の強がりで、かつて盲腸をギリギリまで我慢してとうとう救急車で運ばれたことがあったくらい。
それに―――。
「今日、啓吾…くん、帰るの遅くなるって言ってた」
これから始まるライブが、そう早く終わるはずない。
侑治の知り合いのバンドだと言ってたし、終わってすぐに帰ってくるとも思えない。
彩はキッチンを通りかかったとき、母親に声を掛けられて足を止めた。
「え、じゃなくて、これお隣りに持って行ってちょうだいって言ったのよ」
母親はそう言いながら、小さい鍋にできたてのシチューを注いだ。
「今夜お隣りのご夫婦いないでしょ?
しかもさっき英ちゃんに会ったんだけど、すごく顔色が悪かったからお母さん心配で…」
「―――英知、具合悪いの?」
彩は驚いて聞き返す。
いつも元気すぎるくらいの英知が具合悪そうに見えるなんて、相当悪いんだ。
「顔が真っ青だったわよ。
平気だとは言ってたけど、お母さんいないでしょ?
啓くんはしっかりしてるから心配ないと思うんだけど、ねぇ…」
英知の言う大丈夫は当てにならない。
英知は極度の強がりで、かつて盲腸をギリギリまで我慢してとうとう救急車で運ばれたことがあったくらい。
それに―――。
「今日、啓吾…くん、帰るの遅くなるって言ってた」
これから始まるライブが、そう早く終わるはずない。
侑治の知り合いのバンドだと言ってたし、終わってすぐに帰ってくるとも思えない。

