「バーカ、飽きさせるかよ。
…じゃあ、気を付けてな」


前半は侑治に、後半は彩に言うと、啓吾は手を振って行ってしまった。


二人の背中を見送り、彩はゆっくり歩き出す。


啓吾と付き合い出してからの数日間で、二人で歩くのに慣れてしまったみたいで、繋げない手が寂しい。


だけど。


―――飽きさせるかよ。


さっきの啓吾の言葉を思い出すと、心がほっこりしてくる。


うん、本当に飽きる気がしない。


付き合い出してから知った啓吾は、結構わがままなとこがあるし、自信家でちょっとナルシストだし、彩が思い描いていたような完璧な王子様じゃなかった。


だけどその改めて知る啓吾の全てが、ちっとも嫌じゃなかった。


自分の中で啓吾の存在が日に日に大きくなっているのが分かる。


どんどん好きになっていく。