「突然でごめんな。
…でもああ言っといた方が、後々も楽だろ?」


啓吾がそう言った瞬間、彩は現実に引き戻された。


一瞬でも、もしかしたら啓吾が自分を気に掛けていてくれたのかもしれないなんて思ったのが恥ずかしい。


上級生たちから助けるためだけの言葉だって分かっていたはずなのに、何をこんなに落ち込んでるんだろう。


「そう…だよね。
さすが啓吾くん、頭いいなー」


ショックを受けたなんて知られたくなくて、彩は声を出して笑ってみせる。


ああ、本当に情けない。
彩がそう思ったとき。
啓吾が彩を抱き締めた。


「え…?」


「―――少し意地悪しただけなのに、真に受けんな…」


啓吾は抱きしめたまま、彩の頭をくしゃくしゃと撫でる。


「俺としてはいい加減、こういう気持ちなんだけど」


耳元で囁く啓吾の甘い声に、めまいがしてくる。
何も考えられない。