初恋の実らせ方

「許して欲しかったら、もう二度と啓吾に―――」


そこで急に沈黙が訪れ、それに続いて掴まれた髪の痛みもなくなった。


不思議に思って目を開けた彩は、恐る恐る上級生の視線を辿る。


白い胴着に黒い袴。
和装には少し明る過ぎるくらい茶色く、緩いパーマの当てられた短髪。


―――あ…。


その顔を見てホッとしてしまい、今まで堪えていた涙が一気に溢れてくる。


「啓吾くん…」


かすれて、ほとんど声にならない。


「何やってんの?」


啓吾の声のトーンがいつもより低い。
そして彩にゆっくり近付くと、ぐしゃぐしゃになった頭をそっと抱き寄せる。


「聞こえなかった?
何やってんのかって聞いたんだけど」


啓吾からの冷たい視線を浴びて、上級生たちはうろたえながら顔を見合わせた。