彩なりに、登下校の時間は極力ずらしたし、軽はずみに話しかけないように心掛けていたのに。


やっぱり自転車に乗せてもらうんじゃなかった、なんて今さら後悔しても遅かった。


「幼馴染みだかなんだか知らないけど、啓吾に付きまとわないでよ。
勘違いしてんじゃないの?」


勘違いなんかしていないもん、と彩は唇を噛む。


自分が啓吾に釣り合うなんて思ったこと、一度だってない。


だけど、そう言ったところで彼女たちが納得するはずもないから、彩は黙ったまま黒髪の彼女を見つめる。


「何よ、その目!」


口を開かない彩に腹が立ったのか、周りにいた一人が彩を突き飛ばした。


「痛っ…」


壁に頭を打ち、痛みが走る。


「あんたみたいな子供っぽい子、啓吾が相手にすると思ってんの?」