初恋の実らせ方

見ればベッドのカーテン越しに、一人の少年がこちらを申し訳なさそうに覗いている。


一瞬のうちに涙は乾き、次いで急速に照れが襲ってきて、彩は慌てて英知の顔を押し退けた。


「いってー、何すんだよ!」


英知はひねった首をさすりながら彩を睨む。


「それはこっちのセリフよ。
人のこと騙して、心配させて…。
この嘘つき!」


「は?ふざけんなよ。
彩が勝手に勘違いしたんだろ!」


「勘違いじゃないわよ。
あのマネージャーの子にちゃんと確かめたもん」


英知の脳裏に真希のにやりと笑う顔が浮かぶ。
―――あのやろう…。


英知が黙った隙に、セカンドの彼は気まずそうに救護室を出て行く。


「ちょっと待て、田中!
お前覚えておけよ!」


英知はそう叫びながら、この恋は前途多難だと確信した。




おわり