初恋の実らせ方

「でも、無事で良かった。
すごい心配したんだからね…」


英知は彩の泣き顔に苦笑しながら手を広げて見せる。


「大丈夫だよ、ほらピンピンしてんだろ？
それに終わってみれば五対二の楽勝…」


彩はその瞬間英知に抱き着いていた。
英知の温もりでホッとしたせいか、さらに涙が溢れる。


英知は呆気にとられ、ただ硬直しながら腕の中にいる彩を凝視する。


彩が自分を心配して泣いてることも。
そもそも啓吾との約束があったにも関わらずわざわざ試合に来てくれたことも。
好きだと言ってくれたことも、全てが信じられなかった。


現実なのを確かめるように、英知は恐る恐る彩を抱きしめる手に力を入れていく。
腕の中にある夢のような感触は、確かに現実だった。


「彩、俺のこと好きって言った…」


英知は幸せを噛み締めながらつぶやく。


「―――そんなこと言ってない…」


「言った！
もう一回聞きたい」


「―――汗臭い」


彩は英知のユニフォームに顔を擦りつけながら笑って言った。