初恋の実らせ方

野球のユニフォームは汚れてはいたものの、怪我なんてどこにも見当たらない。
彩は目を丸くして英知とベッドを見比べる。


「だって英知、怪我したって…」


「―――?
運ばれたのは別のやつだよ?」


英知は訳が分からない、というように首を傾げてる。


「だって…。
四番にボールが当たったって聞いたんだよ?
さっき、マネージャーさんにも聞いたけど、救護室にいるって…」


英知は一瞬黙ったかと思うと、急に吹き出した。


「何がおかしいのよ」


こんなに心配してるのに。
彩が頬を膨らませると、英知はようやく笑いを堪えて口を開く。


「彩の勘違いだよ。
ボールが当たったのは背番号の四番。
セカンドだよ」


「―――え?」


背番号?
そのとき、ふと昔の記憶が甦ってきた。