英知はいつも他のナインに信頼を寄せてる。
最終回で逆転劇を見せたことは幾度もあるし、粘りの強いチームだから勝ち目がなくなったわけでもない。


だけど、味方に普段はありえないようなエラーが続いたあたりから周りを信じられなくなっていた。


勝ちに固執しているのは英知だけで、他のナインは勝負を諦めているかのようにさえ思えた。


だから、いつもなら経験の豊富な先輩キャッチャーに従う場面で、英知はそのサインに三回首を振った後、勝手なボールを振りかぶった。


そしてその直後―――。
金属音が球場に鳴り響き、その球は英知を目掛けて飛んで来た。


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彩は遊園地を出た後、電車に飛び乗って時計を見る。
もう夕方の17時に差し掛かるところだった。


英知の試合はまだ終わってないかな。


電車で揺られること30分、最寄り駅で降りると、彩は母親から聞いたうろ覚えの情報を頼りに、去年まで通っていた中学校の近くの市営球場へ向かう。