九回表、投げる英知は二点のビハインドを負っていた。


決して今日の英知の投球内容が悪いわけじゃない。


相手は県外にも名を轟かす強豪で、実際に打撃の強力なチームだったけれど、試合内容を見れば英知が投げ勝っていたと言っても良いくらいだった。


初回から投手二人は好投を続けていて、途中何度か点が入りそうな展開を迎えたが、各々がそれを堪え、無得点のまま迎えた七回。


英知のチームの外野にエラーが連続し、普段ならば落とすはずのないところで二点失い、そのままゲームは最終回を迎えていた。


一死二塁。
英知はどうしても無失点に抑えたかった。


相手の投手は終盤に調子を上げてきてるから、延長に入ってしまえば英知たちにきっと勝ち目はない。
これ以上差を広げられれば苦しくなる。


どうしてもこの試合に勝ちたかった。
彩がいなくなった今、英知には野球しかないから。