彩は観覧車が地上に着いた途端、走り出す。
それを見た啓吾は面白くないだろうと想像がついたけど、彩はその足を緩めることができなかった。


もう遅いかもしれない。
無神経だった彩を英知はもう許してくれないかもしれない。


だけど、英知にもう一度会わずにはいられなかった。
会って、この気持ちを伝えたかった。


今まで近くにいすぎて気付いてなかった。
いなくなって初めて自分は一人じゃなかったことに気付いた。
いつも側には英知がいてくれたんだ。


構うな、と言われたときほど悲しいことはなかった。
英知の側にいられないことがこんなに悲しいとは思いもしなかった。


いつか、お見舞いを断られたときにはその理由がわからなかったのに、今ならよく分かる。


―――英知に、会いたい…。