「格好良い幼馴染み、いいなー」


羨ましそうにつぶやいた沙耶の声で、彩は我に返る。


「何?ボーッとして。
どうせ長谷部先輩の余韻に浸ってたんでしょ」


「先輩の体しまってたなー、とかエロいこと考えてたら嫌われるぞー」


「沙耶ってば…」


あながち外れてもいなかったから否定もできず、彩はふて腐れながら教室に入った。


******


「今の子、誰?
かわいいじゃん」


啓吾は振り返って、そう言った人物の顔を見ると、自転車に鍵を掛けながら素っ気なく答えた。


「まぁね」


「彼女じゃないよな。
今度いっぺん貸して」


啓吾は嫌だね、と舌を出す。


「侑治みたいな奴に貸せるか。
大事な幼馴染みを孕ませたくない」


その言葉に、侑治は飲みかけのコーヒーを気管に詰まらせてむせた。