初恋の実らせ方

「英知はいいのに、俺はダメなの?
どこにそんなのを納得する彼氏がいると思うんだよ」


啓吾はそう言い捨てると、彩の顎に手を当てて強引に口を開かせた。


「やだ、啓吾…!」


啓吾の舌が、強引に彩の口に割り入る。
その感触は彩が知っているものでも、彩がして欲しいものでもなかった。


彩の目に涙が浮かんだのに気付いて、啓吾は口を離した。


「何で泣くんだよ…?」


「分かんない…」


彩が知っているキスは、もっと体中が泡立った。
初めてだったのに、不思議と不安も嫌悪感もなかった。
彩がして欲しいキスは、その相手は、啓吾じゃない。


「わかんねぇわけないだろ!
言えよ、彩。
もういいから言えって!」


啓吾の叫ぶような声を聞いて、彩の頭にようやく答えが浮かんだ。


彩がキスをしたい相手は、たった一人しかいなかった。
彩はぽつりとつぶやいた。


「―――私、英知が好きみたい…」