初恋の実らせ方

啓吾の言葉に彩は何も言えなかった。
啓吾がそういうふうに思っていたことがショックだった。


だって、英知にキスされたことを知ったとき怒らなかったし、自分は彩が嫌じゃなくなるまで待つからとも言ってくれた。


「違う…。
あのときは英知が急に…」


その瞬間、啓吾の唇がは彩の口を塞いだ。
熱を持った舌が忍び込もうとし、彩は即座に啓吾を強く押し退ける。


「やめて…!」


「何で?
急ならさせるんだろ?」


啓吾は彩が抵抗できないように両手を掴み、もう一度迫る。
彩は全力で逃れようとしたけれど、啓吾の力に敵うはずがなかった。


啓吾の熱い唇が彩の唇を包む。
彩は口を閉じて、啓吾の舌を受け入れないように堪える。


いつまでたっても口を開けない彩に啓吾は業を煮やしたようで、一度唇を離し、感情のない目で彩を見た。


「―――何で?」


啓吾にため息混じりに言われ、彩は首を振る。
分からない、という意思表示だ。


キスを拒んだせいで啓吾に嫌われるのは怖い。
だけど、今啓吾とキスするのはなぜかもっと嫌だった。