初恋の実らせ方

「英知の話はいいよ。
―――そんなことより…」


黙っていると英知の表情や声や仕草を思い出してしまいそうで、彩は無理矢理他の話題を探す。
啓吾はそんな彩を見て、珍しいね、とつぶやいた。


「―――何が?」


「いや、英知の話に食いつかないから」


真っ赤になった彩を見て、啓吾はそう言ったことを自己嫌悪する。


「ごめん…。
意地悪だったな」


「いいの、別に」


彩は無理して笑いながら、試合が気になっているのは本当のことだから、とつぶやいた。


彩の笑顔が余計に痛々しくて、啓吾はごめん、ともう一度素直に謝る。
嫉妬で皮肉を言ってしまうなんて、今までの啓吾だったら考えられなかった。


「いいってば」


そう言いながらも不安そうな様子に気付き、啓吾は彩をそっと抱きしめた。


手を離せば彩はすぐにでも側からいなくなってしまいそうで、啓吾はその手に力を込める。