初恋の実らせ方

英知、という言葉を聞いただけで体が反応してしまうことに、彩は戸惑った。


ついこの間までは、こんなふうになるのは啓吾に対してだったのに。
いつからこんなにも英知を気にするようになってしまったんだろう。


啓吾はそう言うと観覧車の列の最後尾に並んだ。
週末なのに遊園地に人は少なく、すぐに順番が回って来そうだった。


「―――うん」


「今頃、どうなってんだろうな」


英知の試合は今日の14時開始だったはず。
15時を回った今はきっと中盤に差し掛かったくらい。


英知はいつも通りカーブに切れがあって、小気味よいピッチングで相手を苦戦させているんだろうか。


彩だって、ずっと気になっていた。
だけど今は、英知のことは考えたくない。