啓吾は彩の手を引いて次はこれ、と観覧車を指差した。


一緒に遊園地に来るのは初めてだったのに、どうしてか気分は盛り上がらない。
彩は不安な気持ちが湧き上がってくるのをごまかすように、啓吾の腕を抱きしめる。


「うん」


英知のことを考えちゃダメだ。
啓吾を信じよう、と自分に言い聞かせる。


彩は啓吾の彼女で、彼とのデートを選んだ。
彩は英知のことを考えて苦しくなるのは嫌だった。
啓吾の側で、何の不安もなく居続けたかった。


啓吾はいきなり抱き着いてきた彩の様子から、彼女の不安を悟る。
彩をさらに追い詰めるのはわかったけれど、啓吾は聞かずにはいられなかった。


「そういや今日、英知の試合だったね」


彩の体が一瞬震えたのが分かり、啓吾は唇を噛む。