だけど今は啓吾とのデート中。
英知のことを考えてる場合じゃない。


「ならいいけど」

啓吾は笑むと、彩に手を差し出した。


ふと、啓吾は彩の言葉を信じすぎる、と思った。
この間デートをすっぽかされたときもそうだ。


確かに怒る気はなかったけれど、気にしなくていい、と言った彩をあまりに疑わなかった。
普通ならば怒って当たり前の状況なのに、啓吾は疑問を持たなかったのかな。


それは確かに彩を信じている証拠なのかもしれないけれど、その分、彩の気持ちを汲もうとする気がないように感じるのは気のせいだろうか。


もし英知なら…。
彩はそこまで考えたところで頭を振った。
また、無意識のうちに英知のことを考えてしまってる。


彩は差し出された啓吾の大きい手を取った。
英知と同じ、熱い手。
今、啓吾は何を思っているんだろう。