突然すぎる、と彩は思った。


英知は彩にとって弟みたいな存在で、いつも誰よりも側にいた。


だけど、その距離は近すぎて恋愛対象にはなりえなかったし、これからもきっと同じだろうと思う。
それほどまでに英知の存在は彩に近かった。


いつか感じたように、まるで半身であるかのように、英知は彩の側にいすぎた。


今さら好きだなんて言うのはずるいよ。
そんなこと今まで一度も言わなかったくせに。


いつもからかっていたくせに、あんな真剣な顔で告白するのは反則だ。
いつもは見せない顔で彩をドキドキさせておいて、そのくせ怒って帰っちゃうなんて。


―――もう構うな!
英知のその言葉が辛辣すぎて、何も考えられない。
思い出すだけで心臓を掴まれるように痛い。


「―――どした?」


啓吾に顔を覗き込まれ、彩は少し困りながら首を振った。


「何でもないよ」


言った側から嘘だ、と自分で分かってる。
この間の英知のことが気になって、ずっと頭から離れない。