英知の顔は今まで見たことがないくらい真剣だった。


彩は心のどこかで、英知がいつものように、いたずらっ子のような顔で冗談だよ、と笑ってくれるのを待っていた。


そう言いながら彩をからかう英知の顔は容易に想像できるのに、目の前の彼はこんなにも近くで見ているのに英知に見えない。
普段とのギャップが大きすぎて、英知だと認識できない。


「俺のこと何とも思ってないなら、もう俺に構うな!」


英知の言葉に、その険しい表情に、彩の心臓は自分のものとは思えないほど激しく波打つ。
そして、頭が真っ白になった。