そうだよ、と頷く彩を見て啓吾はため息をつく。


中間試験が迫るにつれて、元気がなくなっていく彩を見るに見兼ねて、啓吾は勉強を見てあげることにした。


啓吾はそんなに時間をかけることなく終わると思って学校帰りに彩を部屋に招いたけれど、その読みは見事に外れた。


「何の教科?」


「数学と英語と化学と、あと古典と…」


ほとんど全部じゃん、と啓吾は苦笑する。
今日中に終わらせるのは到底無理なようだ。


「あくまで解き方を教えるんだからな。
―――で、何からやる?」


「うーんと…。
やっぱり数学」


彩が教科書を開いて、隣に立つ啓吾に試験範囲を伝えると、彼は少し考えるようにした後、まるで進学塾の有名講師のようにてきぱきと説明し始める。


大事な箇所に下線を引きながら丁寧に教えてくれる啓吾の説明はすごく分かりやすい。


だけど、初めはしっかりと説明を飲み込みながら聞いていたものの、一度躓いてしまうと、次の瞬間にはついていけなくなってしまった。


そんなとき、不意に啓吾のシャープペンを持つ手に目がいく。