彩が啓吾の部屋に入るのはまだ3回目。


幼馴染みとは言っても実際によく遊んでいたのは英知で、英知の部屋にならば何度も入ったことがあった。
歴然とした回数の差に気付き、内心戸惑う。


きちんと整頓された部屋はさすが几帳面な啓吾らしかった。


英知の部屋の広さとあまり変わらないはずなのに、机とベッドと本棚という必要最低限のものしかないから随分広く感じる。


彩が啓吾の椅子に座らせてもらい、用意してくれたクッションを抱きしめながらボーッと部屋を見回していると、何落ち着いているんだよ、と笑われた。


彩がそのクッションを背中に置き、思い出したかのように目の前に次々に教科書や参考書を広げていくと、初めは笑っていた啓吾もさすがに顔色を変えた。


「ちょっと待て彩。
テストが近いから、少し教えて欲しいって言ったよな」


そう言いながら啓吾が机の隅にティーカップを2個置くと、彩の好きなダージリンの香りが広まった。