初恋の実らせ方

真希の腕は暖かくて、英知は知らぬ間にその腕を抱きしめ返していた。


真希の体は想像していたよりもずっと華奢で、腕に力を入れれば簡単に折れてしまいそうだった。
――――まるで彩の体のように。


彩を思い出した瞬間、英知は我に返って腕を解いた。
腕の中の真希の温もりは、英知の欲しいものじゃない。


「仙道…、ごめん俺―――」


真希は英知の腕を掴んだ。
凜とした表情のまま英知から目を逸らさない。


「やだ、離さないで！
私は英知にずっとこうして欲しかったの。
もっともっと抱きしめて欲しいの」


「ごめん、俺やっぱり…」


英知は首を振ってその手を払う。


真希とこうしていてもなお、彩のことを考えてしまう。
実るはずのない恋だと分かっているのに、どうして思いを断ち切ることができないんだろう。


「私だったら英知にそんな顔させない…」


真希が好きなのは元気な英知の笑い声だ。
こんな悲しそうな英知じゃない。