確かに、振った後も真希の態度は以前と変わらなかった。
真希の英知に向ける視線は他の人とは違った。


英知だって、彩が啓吾の彼女だと知りながら実際諦めきれずにいるんだから、簡単に切り替えられないことくらい分かってる。


だから英知は、真希の気持ちがいつか風化してくれればいいと思っていた。


「騙された方がバカだって言われりゃそうかもしれないけど…。
でも俺は言われた通りにしたんだ、仙道だって、自分が出した条件くらい守れよ」


いつの間にか、英知は自分に対する怒りを真希にぶつけていた。


振られたのに諦められない真希に、自分を重ねていた。


「守ったよ、諦めたよ!
―――だけど、本当に諦めようって決心したのに、その瞬間また好きって気持ちが溢れたんだもん、しょうがないじゃない!」


「そんなん屁理屈だ…」


英知は真希から目を逸らす。


真希への怒りからじゃない。
彼女の言葉が重く、頭の中でぐるぐる回っていた。