英知は振り返って真希を見た。


「それは…」


言わない約束だった。


確かに英知は真希とキスした。
それは事実だけど、そのとき限りのことだと約束した上でのことだった。


―――英知と私は絶対上手くいくと思う。
中学に入学してすぐ、ある春の日に真希はそう言った。


英知と真希はクラスメイトで、かつ同じ野球部だったから、男女隔てなくよく一緒に騒いでいた。


真希が好意を持ってくれてることに英知はすぐ気付いたし、明るくて性格も良いから気に入っていたけれど、友達以上には思えなかった。


―――仙道とは友達でいたい。
体のいい振り言葉だけど、本心だった。


せっかく気の合う友達をこんな形で失いたくなかった。
だからかもしれない、その条件を飲んでしまったのは。


真希は、キスしてくれたら諦めると言った。
だから真希とキスをしたし、興味本位だったからこそ即座に後悔した。