「すぐそこじゃん。
乗って行きなよ」


啓吾はただ彩が照れているのだと思って、スピードを落とさない。


「でも誰かに見られたら…」


彩が言葉を濁すと、啓吾はちらっと振り返る。


「見られたくないやつでもいるの?」


啓吾は茶化すように言った。


啓吾はどうして自分の人気に疎いんだろう。
その取り巻きに責められるのが怖いなんて、思いもしないんだろうな。


「そんな人いないけど…」


「なら、いいじゃん」


「でも、誤解されたら啓吾くんも迷惑でしょ?」


彩はセーターを引っ張って聞いてみる。