「彩…どした?」


勢いよく駆け寄って来た彩に、啓吾の方が驚いて笑った。


啓吾の出番はこれで終わり、これから始まる対戦高校の競射を観戦しようと外に出て来たところだった。


「どしたじゃないよ、ほっぺた平気?」


彩がそっと頬に触れると、啓吾は痛みを堪えるように目を細めた。


「ほら、痛いくせに我慢して…」


弦は切れたときに啓吾の頬を強く打っていた。


彩はちょっと待っててと言い残し、近くの手洗い場でハンカチを濡らして来る。


「気持ちいい」


冷たいハンカチを頬に当てると啓吾は声を漏らした。
しばらく頬を冷やした後、まだ当分引きそうもない痣に彩が溜め息を吐くのを見て、啓吾は笑った。


「大丈夫だよ」


「―――本当かな…」


啓吾が英知と同じくらい強がりなのは彩が一番よく分かっている。


だけどそれと同じくらい、啓吾は彩の理解者。
彩は少し心配性過ぎる、啓吾はそう思って苦笑した。