今日の啓吾は絶好調で。
的前に立つのは既に四回目だというのに全て皆中し、高得点を叩き出していた。


ただ、この立ちに入ってから啓吾は何となく弓に違和感を持っていた。


既に矢は三本放っており、もう一本放てば啓吾の競射は終わる。


啓吾は団体戦の一番手である大前という立ち位置にいて、次いで二的、その後に中、落ち前、落ちと続く。


落ちが射るのを待ち、啓吾は弓を引き分ける。


何か変だ、そう思ったが、啓吾は矢を放つ直前までその原因が分からなかった。


そして離れた瞬間に謎は解けた。


矢が的を貫いた明るい音と同時に鈍い音が響いた瞬間、ざわめきが起こった。


彩は驚いて隣りで応援していた先輩に尋ね、そして啓吾の弓の弦が切れたのだと知らされる。


見れば確かに啓吾の弓だけが弦の支えを失い伸び切っていた。


しかし啓吾は動じることなく美しい立ち居振る舞いで退場した。


弦は切れたが矢は的に当たったし、試合には支障はないと先輩に教えられたけれど、啓吾の頬が赤くなっているのに気付き、彩はいても立ってもいられず走り出していた。