初恋の実らせ方

「―――グラウンドの整備で部活がないのは本当だよ」


「そういうことじゃなくて。
用事があったなら、嘘吐いてまで私に付き合わなくて良かったのに…」


きっと英知は、彩に気を遣わせないために嘘を吐いたんだ。


アウトドア派の英知がDVDを借りに行く途中だったというのも、考えてみればおかしい。
たまたま近くにレンタルDVDショップがあったから、それを見てとっさに考えた可能性をどうして疑わなかったのだろう。


あのとき英知が漏らした仕方ねぇな、という言葉は、用事をキャンセルして啓吾にすっぽかされた彩に付き合ってあげるか、という意味だったんだ。


「―――大した用事じゃなかったし…」


「でも英知から手伝うって言い出したんでしょ?
そういう中途半端なこと嫌いなくせに…」


英知の性格は彩が一番よく分かってる。


「だから、それより大事だと思ったんだよ。
彩の側にいることが」


英知は彩を見つめ、そして緊張で震えながら彩の返答を待った。