「わ、私は…」


「―――兄貴の彼女」


彩が困っているのに気付き、英知が口を挟んだ瞬間。
ボブの子は目を見開くと、彩に詰め寄り咎めるように叫んだ。


「英知の頬の痣はお兄さんが―――」


「仙道!」


英知の大きな声が彼女の言葉を遮った。


その声があまりに緊迫していたからか、仙道と呼ばれた子は黙る。
だけど、すぐに何で止めるの、と責めるように英知を睨んだ。


英知が彼女の言葉を彩に聞かせたくなくて遮ったことは分かった。
だけど、彩には断片的ではあったもののしっかりと聞こえていた。


―――痣、お兄さん…。
同時に、さっきまで気にかかっていたことが収束していくのを感じる。


「―――だって英知…」


「いいって!」


英知の剣幕に、彼女は不満そうにしながらも従ったけれど、彩に対してさらに敵意を抱いたように見えた。