初恋の実らせ方

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「ねぇ、このフルーツのとチョコのとどっちがいいかな」


彩がワクワクしながらメニューを見ている向かいで、英知は呆れたように溜め息を吐いた。


昼過ぎから今までさんざん買い物に連れ回された挙句、ケーキが評判な喫茶店に引っ張って来られたが、甘い物が苦手な彼にはケーキを見て喜ぶ彩の気持ちが全く分からない。


「―――どっちも頼んで太れば」


英知は店内に漂う甘い香りに頭がくらくらして、メニューを見て一緒に選ぶ気にはなれない。


「じゃあさ、私がフルーツの方頼むから、英知はチョコの―――」


「却下」


即座に否定する英知に、彩は頬を膨らませ、結局カロリーの低そうなフルーツケーキを注文した。


店員がいなくなってから英知は彩に目をやる。


「色気ゼロ」


「英知と一緒のときに色気なんて必要ないもん」


だけど彩は前からずっとこの店に入ってみたいと思っていたから、文句も言わずに付き合ってくれる英知がありがたかった。