「別に…」

秀平はそこで一旦切ると、少し間を空けてから続けた。

「別れようって言ったら、ひっぱたかれた」

「え…?」

思わずトレイの上に手をついた私は、もうちょっとでカレーライスをひっくり返すところだった。

「お前っ!
危ねぇなぁ。
カレーがかかったらどうするんだよ…」

タケルが私の頭を軽く小突きながら口を尖らせる。

「ご、ごめん」

動揺しすぎだ、私。
落ち着かなきゃ。
そう思いながら、落としたスプーンを取り替えるために席を立った。

「…頭からカレー被るなんて林原じゃあるまいし」

文句をたれるタケルに秀平が相槌を打つのを聞きながらも、私の頭の中は二人が別れたことでいっぱいだった。