恋する手のひら

「いいよ。
そう簡単に吹っ切れないのは分かってるし」

その言葉にホッとする。

タケルには悪いけど、もう少しだけ甘えさせてもらってもいいのかな、なんて思えてくる。

「秀平のこと忘れさせてやるって決めたのは俺だし。
もし実果がずっとあいつを引きずるようなら、俺の力不足だから」

胸が締め付けられる。
早くタケルと向き合えるようにならなきゃいけないと、何となく焦ってしまう。

気付けばいつの間にか観覧車は一周を終えていた。

降車しながら、恋人モードにならかったことにホッとしていると、急にタケルに腕を掴まれる。

「え?」

何だろうと思って振り返ると、突然タケルにキスされた。

よりによってこれから観覧車に乗ろうと列を作ってる人から丸見えの降車場で、なんて。
公衆の面前にも程がある。