恋する手のひら

神妙な面持ちの秀平の両親に頭を下げて、廊下のソファに腰を下ろす。

私の体がガタガタと震え出すのに気付いて、タケルが手を握りしめてくれる。

痛いくらいにギュッと力のこもったその手が、私の心のわずかな支えになった。


手術は六時間にも及び、待つことしかできない私には、気が遠くなるほど長く思えた。

手術後に執刀医から、手術は成功したが、頭を強く打ったために意識が戻る保証はできないと聞かされた。

「最善は尽くしましたが…」

医師の言葉に、秀平のお母さんはまるで子供のように泣き崩れる。

だけど私は不思議と涙が出なかった。
きっと頭が受け入れることを拒否していたんだと思う。


ICUに移された秀平は、ガラス越しに見る分には驚くほど外傷がないように思えた。

きれいな寝顔。
まるで、今にも目を覚ましそう。

だけど体に繋がった呼吸や点滴の管は、依然として事故の生々しさを物語っていた。