恋する手のひら

目の前のタケルの顔は明らかに不機嫌そう。

秀平の高所恐怖症なんて今は関係ないだろ、と無言で責められてる気分。

私は慌てて話を逸らすために、観覧車から園内を見下ろす。

何か話題になりそうなものはないかな。
そう思ったとき、わざと古めかしく造ってある建物が目に入ってきた。

「あ、お化け屋敷!
ここのは怖いし迷路になってるしで、私腰抜かしちゃったことあったよね」

思い出すのも恥ずかしいけど、一昨年の夏。
クラスの友達六人で遊びに来たときのこと。

盛り上がって、一人ずつ入るってルールを作っちゃったもんだから、嫌だって必死に抵抗したのに、怖いのが苦手な私も一人ぽっち。

そして案の定、あまりの怖さに足がすくんだ私は、建物の中で動けなくなっちゃったのだ。