恋する手のひら

「次、観覧車乗行くだろ?」

そう言いながら私の好きなチョコの入ったミックスソフトクリームを差し出してくれるタケル。

うーん。
今まで当たり前のように思ってたけど。
何も言わなくても自分のことを分かってる人がいるのって、本当はすごいことなんだと今更実感。

そんなことを思いながらソフトクリームを食べているうちに、観覧車の順番が回ってきて、私たちは慌てて乗り込んだ。


───しまった。
観覧車が動き出してから、密室だったことに気付いた。

恐る恐るタケルを見ると、案の定、私の顔をじっと見つめてる。

さすがにこの状況だと恋人モードは避けられない。
またキスとかされたらどうしよう。

タケルのことは好きだし、嫌な訳じゃないんだけど、気持ちの切り替えが追いつかなくて、私は何とか空気を変えようとする。

「そ、そういえば観覧車って言えばさ。
いつもあんなにすましてるくせに、秀…」

秀平って苦手なんだよね、と言おうとして口ごもる。

まずい、墓穴だ。
よりにもよって秀平の話題を出すなんて。