恋する手のひら

「途方もない片思いがようやく実ったんだから、優しくしてあげてね」

久美子がしゅんとした私の頭をポンポンと叩く。

「タケルを悲しませたら承知しないからね」

何だかんだ言って、結局タケルは久美子と沙耶から愛されてるなぁと思った。

だけど、二人の言う通りだ。
今までさんざん振り回した私にできるのは、早くタケルの気持ちに応えられるようになること。

一刻も早く、秀平を忘れなきゃいけないんだ…。


今朝の出来事を思い出して急に黙り込んでしまった私を不審に思ったのか、タケルが顔を覗き込んだ。

「どうした?」

私は何でもない、と首を振る。

今はまだ秀平のこと忘れるのは無理だけど、そのうち思い出にできるよね。

タケルが側にいてくれればきっと大丈夫。
タケルはすごく頼りになる存在だから。